2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した日本人科学者の本庶佑氏が、日本の製薬会社である小野薬品工業と特許使用料をめぐって争っています。
背景
報道によれば、2006年に、本庶氏と小野薬品工業は、がん治療薬「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)に応用されたPD-1に関する特許のライセンス契約を締結しました。しかし、オプジーボの開発が進んでいた2011年に、本庶氏がロイヤリティの引き上げを要求しましたが、交渉は期待したようには進みませんでした。そこで、本庶氏は、2019年4月10日に、世間の支持を得るために、契約の背景や概要を公表するという手段に出ました。
この契約では、本庶氏と小野薬品の共有特許について、小野薬品が独占的に使用する権利を有し、本庶氏に一定のロイヤルティを支払うことが明記されています。小野薬品は累計で26億円を支払いました。しかし、その額に不満を持った本庶氏はそれを受け取らず、全額を法務局に供託しました。
発明の共有化には注意が必要
ところで、本庶氏は、特許出願のための予算の都合上、特許を共有とすることにしました。日本では、共有者が特許を第三者にライセンスしようとすると、他の共有者の同意を得なければなりません。その一方、共有者はそれぞれ自由にその特許発明を実施することができます。したがって、この場合、本庶氏がライセンス契約を解除すると、小野薬品は引き続き特許発明を実施することができますが、本庶氏は小野薬品の同意を得なければ、他社に特許をライセンスすることはできません。したがって、発明の共有化には注意が必要です。
責められるべきなのは誰でしょうか?
本庶氏の主張の概要は以下の通りです。
- ロイヤリティについての小野薬品の説明は正確ではなかった。
- 現在のロイヤルティ率(売上の1%以下)は低すぎる。
- 契約書を確認する十分な時間がなかった。
- 特許ライセンス契約に関する知識が十分ではなかった。
この事件で本来責められるべきなのは、小野薬品ではなく、京都大学とそのライセンス機関だと思います。彼らは、本庶氏が小野薬品とライセンス契約する際、その交渉および締結をサポートすべき立場にありました。
小野薬品がオプジーボの開発に数百億円の投資をしたのは、その年間売上高が約1,000億円だった頃です。小野薬品は大きなリスクを取りました。成功しなかったプロジェクトもたくさんあったはずです。投資を回収する必要があるのです。上記のような理由で、締結した契約を実質的に変更せざるを得なくなった場合、企業は日本の大学と契約を結ぶことに不安を感じるのではないかと思います。
本庶氏は、ノーベル賞受賞後に若手研究者のための基金を設立しました。小野薬品からのライセンス料の一部をこの基金に寄付したいと言っています。そのため、小野薬品は風評被害を考慮して、最終的には、その基金に寄付することでこの問題を解決しようとするかもしれません。
このケースから得られる教訓は、持つべきものは良きアドバイザーである、ということではないでしょうか。
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【更新】2019年5月22日、小野薬品がこの問題についてのコメントを発表しました。予想通り、小野薬品は立場を変えず、京都大学への寄付を通じてこの問題を解決しようとしています。