電子商取引のプラットフォーマーは出店者に無料配送を要求することはできるか?

楽天は、2019年夏、3,980円以上購入した場合には送料を無料にすると発表しました。その送料は、出店者に負担させようとしているようです。 

楽天側は、アマゾンなどとの競争が激しいことを理由に、出店者側に協力を求めています。しかし、出店者側はこれに強く反発しています。 報道によれば、楽天市場からの撤退を決めた企業もあるようです。 

その後、公正取引委員会がこの件の調査を開始し、2020年2月10日に独占禁止法違反の疑いで楽天の提携先に立ち入り検査を行いました。楽天はこの件ついて プレスリリース を発表しています。

問題となっているのは、電子商取引のプラットフォームを提供している企業が出店者に送料無料を要求することが、独占禁止法で禁止されている 「優越的地位の濫用」 に該当するかどうかです。

送料無料を提示するために、送料を加えた額を商品価格と設定せざるをえない店舗(特に小さな店舗)も出てくるでしょう。ただ、ビジネスにおいては、交渉上の立場が双方まったく同じという状況はまずありません。

公正取引委員会の決定次第では、多くの企業がビジネススキームやポリシーの見直しを迫られる可能性がありますので注意が必要です。

公正取引委員会は他にも興味深い事案を調査しています。下記の記事で紹介していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

【2020年2月28日更新】 2020年2月13日、楽天は調査をクリアするために、「送料無料」の表現を「送料込み」に変更するという譲歩をしました。しかし、本日、公正取引委員会は東京地裁に対し、楽天が3月18日から予定しているシステム変更を中止するよう、緊急停止命令の申し立てを行いました。

【2020年3月10日更新】 3月6日、楽天は全店舗への送料無料の導入は延期すると発表。ただし、送料無料にすることを同意していた店舗については送料無料を開始するとのこと。結局、楽天は店舗に強制はしないことにしたようです。公正取引委員会は、楽天のこの発表を受けて、2020年3月10日に緊急停止命令の申し立てを取り下げました。この件についての楽天のプレスリリースはこちらです。「公正取引委員会による緊急停止命令の申立ての取下げについて」

お読みいただきありがとうございました。この記事を気に入ってくださった方は、お友達にメールで送ったり、ソーシャルメディアでシェアしたりして、この記事が広まるようにしてくださると嬉しいです。ありがとうございます。