大学と企業の共有特許の問題

以前、政府の事業で、その地域の大学の知的財産を有効活用する地域プロジェクトを支援する事業に携わったことがあります。地域プロジェクトのビジネスモデルやコア技術の評価を行ったのですが、コア技術の特許が、企業との共有になっているという問題に直面することが多くありました。

共有特許の問題点

日本の大学は、研究費や特許出願費用を企業に負担してもらう代わりに、その特許を共有にすることがよくあります。共有にすることは両者にとって妥協しやすいのですが、後々面倒な問題に発展する可能性があるのです。日本の特許法では、共有特許の各共有者は、他の共有者の同意がない限り、その特許の持分を他人に譲渡したり、実施権を与えたりすることができないと規定されているからです。

そのため、大学が特許を他の会社にライセンスしようとするときには、その特許の共有者の同意を得ることが必要になります。共有者である企業が必ず同意してくれるとは限りません。また、共有者が多いときは、そのための努力はさらに困難なものとなり、結局、諦めざるを得ないこともあります。

政府は共有特許の取扱ルールの整備を検討

政府は、このように大学の特許が活用しにくい状況を問題視し、6月に公表した「知的財産推進計画2022」(*1)に、共有先の企業が一定期間、正当な理由なく特許を使わない場合、大学が独自で第三者にライセンスできるルールを整備することを明記しました。そして、政府は、企業と大学が共同研究を行う際、こうしたルールに基づく契約を結ぶよう促すようです。

これは、企業にとっては、大学と共同研究する際の新たなリスクとなります。企業は、共同研究の成果である特許技術の実施状況を監視し、それを実施していない場合には、正当な理由を開示することが必要になるからです。

そのようなルールが作られたら、企業はむしろ、共有特許については、お互いが自由に他にライセンスできるよう、大学と交渉しようと考えるかもしれません。

参照:

*1 知的財産推進計画2022