大学と企業の共有特許の問題
Joint research

以前、政府の事業で、その地域の大学の知的財産を有効活用する地域プロジェクトを支援する事業に携わったことがあります。地域プロジェクトのビジネスモデルやコア技術の評価を行ったのですが、コア技術の特許が、企業との共有になっているという問題に直面することが多くありました。共有特許の問題点 日本の大学は、研究費や特許出願費用を企業に負担してもらう代わりに、その特許を共有にすることがよくあります。共有にすることは両者にとって妥協しやすいのですが、後々面倒な問題に発展する可能性があるのです。日本の特許法では、共有特許の各共有者は、[…]

IPweは知財担保融資を促進するか?

「IPweは金融機関の担保として知的財産を利用することを促進すると思いますか?」という質問を最近受けました。実は、日本では数年前から、知財に基づく融資を政府が促進しています。政府は、金融機関のために知財評価にかかる費用を負担しています。ただ、現時点ではまだ、金融機関は、その評価報告書を、実際の融資判断のための重要な資料としては位置付けているわけではないようです(*1)。金融機関が担保として知的財産を利用する上でのチャレンジは、概ね以下のようなものではないかと思います。その特許の担保価値の評価が難しい。特に、評価額が実際の市場の相場と合っているかは疑問が残る。[…]

経産省「標準必須特許のライセンスにおける誠実交渉指針」を策定

標準必須特許(SEP)に関わる紛争が世界各国で発生しており、今後、異業種間でのSEP紛争が増加することが予想されます。そのため、日本政府(経済産業省)は、SEPライセンス交渉において、特許権者と実施者がとるべき望ましい対応を示しました(*1)。以前(2018年)には、特許庁が「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」を公表しています(*2)。特許庁の手引きは、国内外の裁判例、競争当局の判断、ライセンス実務をもとに、ライセンス交渉に関する論点を客観的にまとめたものだったのに対し、今回の経済産業省の文書は […]

効果的な特許防衛戦略をお持ちですか?

ロシアとウクライナの戦争に関する悲惨なニュースを毎日目にして、心が痛みます。一日も早く戦争が終わり、ウクライナに平和が訪れることを願っています。ビジネスの世界でも、紛争はしばしば発生します。貴社が望んでいなくても紛争に巻き込まれることがあります。貴社のビジネスが成功し、大きな収益が得られるようになってきたときに、それは突然起きたりします。貴社の製品やサービスに脅威を感じている企業もあるのです。その企業は、特許を使って、貴社の製品やサービスを市場から排除しようとするかもしれません。特許はビジネスにおいて強力な武器となります。 […]

中小企業にIPweのスマートプールへの加入を勧める理由
IPwe Smart Pool

IPweは、2022年3月9日、nChain社がブロックチェーン・スマートプールの最初のファウンダーになったことを発表しました。スマートプールは、IPweが開発した新しいタイプのパテントプールです。主要なイノベーションリーダー企業(以下、「ファウンダー」)が、先端技術や新興技術に関する特許群を、その技術を利用する他の企業(以下、「メンバー」)にライセンス提供します。スマートプールは、ファウンダーにとっては、ライセンス機会を大幅に拡大し、また、自社技術の採用を促進し、研究開発への投資収益率(ROI)を向上させることに役立ちます。一方、メンバー企業には […]

商標を売ろうとする前に知っておきたいこと
Registered Trademark

時々、クライアントから「商標を売りたい」という相談を受けることがあります。よくあるケースは、以前に商標登録をしたが、使用する機会がなかったので、それを売却かライセンスすることによって収益化したいというものです。使用していないから売りたいという気持ちはわかります。ただ、一定期間使用されていない商標については、誰でも、その商標登録を取り消すことができる点には注意が必要です。商標の売却を申し入れに[…]

サプライチェーン上のどの企業も特許紛争に巻き込まれる可能性があります
Patent infringement in automotive industry

つい最近(2021年10月)、日本製鉄が、鉄鋼製品に関する自社の特許権を侵害しているとして、中国の鉄鋼企業に加えて、顧客でもあるトヨタを訴えたことで多くの人を驚かせました(*1)。そして今、日本製鉄がさらに三井物産も訴えたことでさらに驚かせています(*2)。なぜなら、三井物産は関連製品を製造していないからです。実は、特許法は、侵害品を「製造」する行為だけでなく、「販売」したり「使用」したりする行為も侵害としています。そのため、特許権者は[…]

元ソフトバンク社員が転職先に持ち出した技術情報は営業秘密だったのか?
Confidentiality management

ソフトバンク元社員が、ソフトバンクが持つ超高速・大容量通信規格「5G」の技術情報を、転職先の楽天モバイルに不正に持ち出したとして、不正競争防止法違反の罪に問われています。その初公判が12月7日に東京地裁で行われました。報道によれば、元社員は、「持ち出した情報は営業秘密と認識していなかった」と述べているそうです。持ち出した情報にはパスワードが設定されておらず、また他社にとって利用価値もなかったとも述べているようです。不正競争防止法で保護される営業秘密に該当するためには、その情報が以下の3つの要件を満たす必要があります。[…]

アルゴリズムの変更に伴う責任
Algorithm

今や私たちの生活のいたるところでアルゴリズムが動いています。Amazonで私の商品購入履歴に基づいた商品を推薦してくるくらいなら大した問題はありませんが、個人の信用力や店の評価などについては、そのスコアによっては深刻な影響を与える場合もあります。昨年の5月、韓国料理店チェーンが、飲食店情報サイの運営会社を東京地裁に訴えました。サイト運営会社が飲食店評価のアルゴリズムを変更したことで、同チェーン店の評価が下がり、売上高も急減したからです。チェーン店側は、これはチェーン店を不当に差別する独占禁止法に違反する行為だと主張しました。[…]

秘密情報を守るためには?
Trade secret

秘密情報を守りたいときは、その秘密情報を開示する相手と秘密保持契約書を締結すると思います。ただ、契約書を締結して満足するのではなく、秘密漏洩のリスクを減らすための運用にも気を配っていただきたいと思います。相手が万一その秘密情報を漏洩してしまった場合、契約違反の責任を追及することはできます。しかし、その情報は他にも知られることになり、秘密の状態には戻すことはできません。ですから、それが本当に重要な情報なのであれば […]