特許を売却するとき、希望額としていくらを提示するのが良いのでしょうか?あなたが欲しい額を提示して構いません。そうは言っても、相場を知りたいかもしれませんね。
特許取引市場での提示価格(2020年)
以下の表は、2020年に特許ブローカーが取り扱った案件での希望価格を示しています。特許1件、米国特許1件、1ファミリーの希望価格について、それぞれ平均、中間、最低、最高の価格を示しています。例えば、米国特許については、平均302,000ドルだったとのことです。ご覧いただいてわかるように、最低価格と最高価格にはだいぶ差があります。
提示価格 | 特許1件 | 米国特許1件 | 1ファミリー |
平均値 | $178,000 | $302,000 | $418,000 |
中央値 | $120,000 | $250,000 | $325,000 |
最低値 | $25,000 | $33,000 | $75,000 |
最高値 | $700,000 | $1,138,000 | $3,500,000 |
米国特許は、他の国の特許より高い価格になっていることがわかります。また、EoUがある特許は、それがない特許より、2倍の価格で売却されるというデータもあります。市場や特許の使いやすさ、つまり、訴訟システムによっても、特許の価値も変わってくるということです。
なお、これらはあくまで、売主の希望価格です。交渉によって、最終的な価格は変わることはしばしばあります。また、売主は、希望価格を具体的な額ではなく、大まかに提示することもあります。例えば、「7桁の低い方」のように提示することもあります。
特許の評価方法
市場で取引されているおおよその価格はわかったと思いますが、具体的な額はどのようにして決めれば良いのでしょうか?一般的に、特許の評価方法には大別して3つの方法があります。
- マーケットアプローチ: これは、類似特許が実際にマーケットでいくらで取引されているかという観点から、その特許の価格を算出する方法です。個別の取引情報を入手することができるのであればベストなアプローチだと思います。しかし、通常、そのような情報はほとんど公開されておらず、類似の事例を発見するのが非常に困難です。
- インカムアプローチ: これは特許評価の最も一般的な方法です。このアプローチでは、評価対象の特許が将来生む出すキャッシュフローや利益の現在価値合計を、その特許の価値とみなします。
- コストアプローチ: これは、研究開発費用等のその特許の構築にかかったコストに基づいて特許を評価します。コストと特許の価値は必ずしも一致しないという問題があります。ただ、実際には、そのコストをカバーできるくらいの価格で売りたいと言う売主もいます。売主にとっては、最低価格を決めるために使われていると言えるかもしれません。
不安定な特許の価値
これらのアプローチを使って売却希望価格を決定します。しかし、本当のことを言えば、その特許の正しい価格を計算することは非常に難しいです。その特許の価値は、買主によっても異なるからです。たとえば、もし貴社が、ある企業から訴えられていた場合、その特許がその企業に対して権利行使できるようなもので、かつ、その紛争で予想されるコストより低い価格であれば、買っても良いと考えるかもしれません。
また、特許の価値というのは不安定です。技術トレンドの変化によって、その技術が使われなくなるかもしれません。さらに、その特許が無効になるリスクもあります。特許は、特許庁の審査を経て付与されるものですが、実際上、先行技術をすべて精査することはできません。したがって、特許取得後に先行技術が見つかったら、特許は無効にされてしまいます。その場合、その価値はゼロになってしまいます。特許権者には酷な話だと思いますが、今のシステムでは仕方がありません。
このように特許の正しい価格を定めることは容易ではありませんが、売主はある希望価格を決めて提示することになります。