以前の記事 「日本の知的財産訴訟制度の見直しに関する議論の最新情報」 では、特許権者の地位向上を求める中小企業と、現状維持を求める大企業という、大企業と中小企業の立場の違いを取り上げましたが、現在、この両者の間の別の対立が注目されています。
下請けなど中小企業の取引条件改善に関する政府ワーキンググループで配布された 資料 によれば、独占禁止法や下請法分野の有識者から、中小企業から優越的地位にある大企業への知的財産権・ノウハウの吸い上げの問題に目を向けるべきとの指摘がされたそうです。この指摘を受けて、政府は中小企業へのアンケートやヒアリングによる調査を開始しました。調査結果は2019年前半に発表される予定です。
政府は最近、資源不足に悩む中小企業やベンチャー企業のために、以下のような施策を実施しています。しかし、発明の権利を奪われてしまっては、これらの施策を利用することができません。
- 知的財産とビジネスの専門家チームを派遣するスタートアップ向け知財アクセラレーションプログラム(IPAS)
- 約2.5ヶ月で特許を付与するスーパー早期審査
- 知的財産を活用した海外展開を支援するジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)
- 審査請求料・特許料を3分の1に削減
ところで、「下町ロケット」という人気テレビドラマがあります。かつて宇宙科学開発機構の研究者だった男が、現在は小型エンジンを製造する家業の工場を経営し、特許問題にも直面したりしながら奮闘する物語です。ソニーやパナソニックもかつてスタートアップ企業でした。今、政府だけでなく、多くの人たちは、中小企業やスタートアップ企業がビジネスの成功させ、経済を発展させてくれることを期待しているのかもしれません。