元ソフトバンク社員が転職先に持ち出した技術情報は営業秘密だったのか?

ソフトバンク元社員が、ソフトバンクが持つ超高速・大容量通信規格「5G」の技術情報を、転職先の楽天モバイルに不正に持ち出したとして、不正競争防止法違反の罪に問われています。その初公判が12月7日に東京地裁で行われました。報道によれば、元社員は、「持ち出した情報は営業秘密と認識していなかった」と述べているそうです。持ち出した情報にはパスワードが設定されておらず、また他社にとって利用価値もなかったとも述べているようです。

不正競争防止法で保護される営業秘密に該当するためには、その情報が以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 秘密として適切に管理されていること(秘密管理性)
  • 有用な情報であること(有用性)
  • 一般に入手できない情報(非公知性)

報道の内容を見る限りでは、元社員は、秘密管理性と有用性の要件が欠けていることを理由に、その情報が営業秘密に当たらないと主張しているようです。

しかし、彼はその情報をわざわざ転職先に持って行ったくらいですから、それなりに有用なものなのでしょう。一般的には、秘密管理性の要件の方が重要な争点となることが多いのです。

秘密管理性を満たしていると言えるためには、会社がその情報を秘密として管理しようとする意思が合理的な管理措置によって従業員に明確に示され、結果として従業員がそのような会社の意思を容易に認識できるようにしておく必要があります。例えば、秘密文書にマル秘と表示したり、パスワードで閲覧者を管理しているなどです。

貴社では、秘密情報をどのように管理していますか?どの情報が秘密情報なのかわかりますか?個々の社員の合理的な判断に期待するようではいけません。この事件をきっかけに、貴社の秘密情報の管理について見直してみてはいかがでしょうか。