カプコン、コーエーテクモゲームスに対する特許侵害訴訟で高額賠償を獲得

2019年9月11日、知的財産高等裁判所は、カプコンとコーエーテクモゲームスの間で争われた特許侵害訴訟の判決を下しました。( 判決文). 

この事件では、カプコンは、コーエーテクモのアクションゲームの「三國無双」と「戦国無双」、ホラーゲームの「零」がカプコンの2つの特許(特許第3350773号と特許第3295771号)を侵害していると主張していました。特許第3350773号は、シリーズの前作のゲームデータをユーザーが入力すると特典(キャラクターの追加など)を獲得できる機能に関するものです。また、特許第3295771号は、ゲーム中の特定のシーンでゲームコントローラを振動させる機能に関するものです。 

損害賠償額については、特許法第102条第3項に基づいて算出された損害額を請求しました。同規定は、ライセンス料に相当する損害賠償額の下限を定めたものです。この規定に基づく損害賠償額は、原則として、侵害品の売上高にライセンス使用料率を乗じて算出されます。

下級審(大阪地裁)では、以下のように判断されました。 

  • 特許第3350773号については、この特許は無効とされるべきものであり、コーエーテクモはこれを侵害していない。
  • 特許第3295771号については、コーエーテクモは侵害しているが、この特許は、重要性や売上への貢献度が高くないため、使用料率は0.5%とすべきであり、損害額は517万円とする。

一方、知的財産高等裁判所は以下のように判断しました。

  • 特許第3350773号については、この特許は無効にされるべきものではなく、使用料率は3%とすべきである。
  • 特許第3295771号については、使用料率は1.5%とする。

侵害者に対して事後的に設定される使用料率は、通常の使用料率よりも高いものでなければならない。また、以下の事情を考慮して合理的に決定されるべきである。

  • その特許について既存のライセンス契約があれば、その契約で設定されている使用料率、それがない場合には、業界で通常採用されている使用料率
  • その特許の価値、すなわち、特許発明の技術内容や重要性、技術の代替性など
  • その特許を使用した製品の売上・利益への貢献度、侵害の状況
  • 特許権者と侵害者との競争関係、特許権者の経営方針など

対象特許のライセンス契約で使用された使用料率は、本訴訟では開示されていませんが、裁判所は、これらの特許発明の技術分野における近年の平均的な使用料率は2.5%であると判断しました。  特許使用料に関する調査研究報告書がその判断の根拠となっています。そして、知的財産高等裁判所は、上記基準を考慮して、特許第3350773号については3.0%、特許第3295771号については1.5%の使用料率とし、コーエーテクモに144,837,710円の支払いを命じました。 

政府は、日本で認められる損害賠償額が低いという批判に対応するため、知的財産訴訟制度の改善に取り組んできました(「特許法 ・意匠法 2019年改正の概要」を参照)。今回の改正を踏まえての判断というわけではありませんが、裁判所が損害賠償額の算定に用いる使用料率を引き上げ、日本の特許の価値を向上させてくれることを期待します。 

報道によれば、 コーエーテクモは、9月24日に最高裁判所に上告したようです。 

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