なぜ他社の商標をハッシュタグに使いたくなるのか?

SNSでよく使われるハッシュタグ。フリマアプリ「メルカリ」で、自分の販売サイトに、他社のブランド名(商標)をキーワードにしたハッシュタグを付けて自分の商品を販売している人がいました。このようなハッシュタグの使い方は商標権の侵害になると、先月、裁判所が判断しました。

大阪地裁判決 令和2年(ワ)第8061号 (令和3年9月27日)

その人はなぜそんなことをしたのでしょうか?

他社のブランドの顧客吸引力への「ただ乗り」

あるブランド名をキーワードにしたハッシュタグを付けておくと、他のユーザーがそのブランド名を検索すると、検索結果に、自分のサイトと商品が表示されるようになります。そうすることで、そのブランドに関心があるユーザーを、自分のサイトと商品に誘動させることができるのです。

これは、他社のブランドの顧客吸引力を利用して、自分の商品の販売を促進しようとするものです。「ただ乗り」です。あなたの会社や商品の信用は、あなた自身で地道に築き上げていくべきものです。

メタタグでも同様の判断

ウェブサイトのSEO対策として、メタタグに重要なキーワードを入れておくことは、広く行われています。メタタグは、ブラウザの画面には基本的に表示されません。しかし、メタタグは、検索エンジンの検索結果に、ウェブサイトの概要として表示されます。その結果として、それがインターネットユーザーの目に触れることにより、ユーザーがそのウェブサイトにアクセスするよう誘導させることができます。それを理由に、メタタグとして他社の商標を使用することは商標権侵害となると判断されています。

東京地裁判決 平成28年(ワ)第23327号 (令和元年5月23日)

ハッシュタグやメタタグでの使用は、伝統的な商標の使用ではありません。そのうち、メタバースのような仮想空間での商標問題も出てくるかもしれませんね。しかし、商標の機能に基づいて考えれば、どのように解決すべきかが見えてくるはずです。