オプジーボ訴訟で裁判所が和解を勧告

「オプジーボ」の特許の分配金をめぐり、2020年6月に京都大学の本庶佑特別教授が小野薬品工業に対して、約262億円の支払いを求める訴訟を提起しました。その後2021年9月に、裁判所は、双方に和解を勧告し、具体的な和解案を提示し、現在、協議が行われているそうです。この紛争の経緯については、以下の記事をご覧ください。

日本のノーベル賞受賞者がオプジーボ特許のロイヤルティ率の引き上げのために国民の支持を求める

日本人の国民性のせいか、多くの日本人または日本企業は、紛争解決のために裁判を避ける傾向があります。裁判所も、判決ではなく和解により解決することに積極的です。実際、特許権の侵害訴訟の30%超が和解により解決されています (*1)。

参照:*1 特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁,平成26年~令和2年)

裁判所が原告と被告双方の主張を聞いた後に、裁判所の心証を開示をして和解案を提示することがあります。当事者は、これによりどちらが有利かわかりますので、紛争を早く解決するきっかけになります。これは訴訟経済の観点からは良いことなのでしょう。

ただ、和解で解決されてしまうと、裁判所の判断が当事者以外には示されずに終わってしまいます。社会にとっては、同様の紛争が発生した場合の判断基準や結果を予測するための判断材料を得る機会を失うことになります。

このオプジーボ訴訟では、一度契約で決めた条件が、本庶氏が言うような理由(前述の記事を参照してください)で、後で変更させられてしまう可能性があるのかどうか、とても気になっています。さて、どんな結果になるでしょうか。

【2021年11月12日更新】

本日、大阪地裁で和解が成立したことが報道されました。小野薬品が本庶氏に解決金などとして50億円を支払い、若手研究者を支援する京大の基金に230億円を寄付するという内容とのことです。結局、小野薬品は、262億円の支払いが求められた訴訟で、280億円を支払わされることになりました。